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$x^x$ の定義再考

ここで、$x^x$ の定義について考えてみることにする。

\begin{displaymath}\text{「$x^x$」}=e^{x\log(x)}
\end{displaymath}

と見てやれば、右辺は $0$ 以外の全ての複素数に対して 定義できることがわかる。 但し、$\log$ の多価性には注意を払う必要がある。

$x>0$ のときには、$\log(x)$ の代わりに標準的な $\operatorname{Log}(x)$ を 使うことができ、それが本編で述べた $x^x$ である。 以下、区別のために、$x^x$ と言えばこの本来のものを指すことにし、上の 拡張された意味の 「$x^x$」を $f(x)$ と書いておくことにする。

\begin{displaymath}f(x)=e^{x\log(x)}.
\end{displaymath}

$x>0$ のときでも、$\log(x)$ として別のものを採用することもできる。 たとえば、$\log(x)$ として、 $\operatorname{Log}(x)+2\pi i$ を採用すると、

\begin{displaymath}f(x)=e^{x(\log(x)+2\pi i)}=x^xe^{2\pi x i}=x^x(cos(2\pi x)+i\sin(2\pi x))
\end{displaymath}

となる。$f(x)$ の絶対値は $x^x$ で、もとのものと一致するが、 それが $x$ が変わるにつれてガウス平面をくるくる回る感じになっている。

$\log$ の多価性を考慮すると、整数 $n$ の一つ一つにたいして、

\begin{displaymath}f_n(x)=x^x(\cos(2\pi n x)+i \sin(2\pi n x)
\end{displaymath}

で定義される $f_n(x)$ の一つ一つのどれもが 「$x^x$ 」の名に値するものである。

グラフは次の節を参照して頂きたい。

$x<0$ の時を調べるために、 $x=-a (a>0)$ と置き直してみる。
\begin{align*}e^{x\log x}&=e^{-a \log (-a)}=e^{-a (\log a +\log (-1))}=a^{-a}e^{...
...^a} (\cos (-na \pi)+i\sin(-n a \pi))
\quad\text{($n$\space は奇数)}
\end{align*}
と書き直すことができる。

どの $n$ を採用するかによって、いろいろなグラフになる。 次節でそれらのグラフを書いてみることにする。



Yoshifumi Tsuchimoto
2000-04-12