指数関数、三角関数をはじめとするいろいろな関数が巾級数で書けるのは 驚くべきことのような気がする。 このことを発見した人々はワクワクしただろうことは、想像に難くない。
関数を巾級数で書く利点の一つは、 前章ですでに見たように、それを容易に複素数の関数と見倣せるという点にある。 三角関数も、上に挙げた巾級数表示により、複素数の関数と見倣せるのである。 これは、三角関数の幾何学的な定義のみを眺めていたのでは、気がつきにくい 点だろう。
円弧の長さと言うような幾何学的な関数を複素数に拡張して、意味があるのだろうか、 と思われる方々もいられると思うが、実はそれが大ありなのだ。 じゃあ「円」じゃなくて「楕円」ならどうか?それはこの項の主題から 少し外れるが、実に面白い話題である。興味のある人は高木貞二著 「近世数学史談」および「雑談」などをさんしょうされるとよい。