「多価関数」という単語は、「関数の概念を少しだけ拡張した」、というか、 「関数ではないんだけど『関数もどきである』」という念のこもったコトバですが、 それを説明する際、例として、どのような日本語を持ってくるのが良いのか。 実は連載時には、「ウミネコはネコでない」というのと同様、と書いたのですが、 これは余り適当ではありません。
関数は多価関数の一種であるけれども、ウミネコとネコの間にはそのような関係は ないからです。 ではどのような例が良いか? つまり、☆☆ という言葉の前に○○という言葉をつけて、○○☆☆という言葉が ☆☆の拡張になっている、そのような言葉があるか、という問題が生じます。
☆☆ という言葉の前に○○という言葉をつけて、○○☆☆という言葉が ☆☆の一種になっているという例ならばそれには事欠きません。
☆☆ | ○○ | ○○☆☆ |
靴 | 革 | 革靴 |
靴 | 紐 | 紐靴 |
靴 | 長 | 長靴 |
鍋 | 鉄 | 鉄鍋 |
鍋 | 土 | 土鍋 |
鍋 | 中華 | 中華鍋 |
しかし、○○☆☆が☆☆の拡張になっている言葉となると、 注意して見ないとなかなか見つけにくいようです。 数学ではほかにも「量子群」など、このテの言葉がたまに見られます。
単行本で挙げたのは一つの例ですが、もっと良い例があるに違いありません。 (実は「これはピッタシ」という例を見つけたような気がするのですが、 忘れてしまいました。)