A1. このことを示すには選択公理をもちいるのですが、 (それと同値であるところの) Zorn の補題を用いた方が簡単ですので、そうします。 Zorn の補題と選択公理の関係については、集合論の本、あるいは実解析学の 教科書の最初の方などを参照してみてください。
Zorn の補題の使い方そのものも、精密にやらないとすぐに間違えてしまいますから、 それらの本を参照して習熟して頂くことをお勧め致します。 ここに書くことはあくまで参考程度だとお考えください。
まず、無限個の元の一次独立性の定義について復習しておきますと、 族 が一次独立であるとは、 のどの有限個をとってきても一次独立といういみです。 (今言うところの「族」と集合とは、 添字集合 で名前がつけられているかどうかが異なります。 有限数列と有限集合の違いのようなもので、両者は
厳密には集合と族は違って、一般に基底の話をするときには族を使う方が ふさわしいのですが、今の場合に限っては集合で扱っても 問題はない 1ので、以下ではそのようにします。
例えば、 は 上一次独立になります。 (証明には が超越数であることを用います。)
さて、 の部分集合 で、その元全体が一次独立なものはいろいろありますが、 それらを全部集めたものを と書きます。
主張 の任意の全順序部分集合は の中に上界を持つ
じっさい、 の全順序部分集合 に対して、
(★) |
は の元で、 は のどの元よりも大きくなります。
念のために、 が の元である、 すなわち の元の全体は 上一次独立なことの 証明をしておきますと、 の任意の互いに相異なる有限個の元 をとってくると、 はそれぞれ ある の元 の元になっており、 は全順序集合であるということから、 のなかのどれか一つ は のどれよりも大きくなります。 この は を全て含むことになり、 は 上一次独立であったので、 は一次独立というわけです。
(蛇足ながら、 が全順序集合であるという仮定を外すと、(★)式によって決まる は一般には独立ではありません。 たとえば、 などとなります。)
上の主張と Zorn の補題から、 は極大元を持ち、 その極大元は の基底になるということがわかるというわけです。