IIにおいて、コタンジェントバンドルがいかに微分作用素のなす環と 結びつけられるか、という問題について述べた。
そこでも触れたように、この操作を一般化して シンプレクティック多様体の「量子化」をすることを考えることができる。
シンプレクティック多様体
とは、
多様体
と、
その上の非退化閉2-形式
の組のことである。
が非退化であることにより、
は
を用いると、
上で
定義された環
を次のように定義できる。
![]() ![]() |
||
![]() |
||
この環は
を一次の無限小だけ変形したものである。
これを
が無限小ではなくて有限の大きさをもつところにまで伸ばせるか
についてはいろいろな議論がある。
(これについては例えば、
大森英樹著, 一般力学系と場の幾何学 裳華房, 1991 や
Woodhouse, Geometric Quantization Oxford, 1980
等を参照されたい。)
上の関係式に現れる
はしばしば
のポアソン括弧と呼ばれ、
と書かれる。
を
と書き、
この表記を使えば、最後の関係式は、
の交換関係
しかし、一般的なシンプレクティック多様体に対して如何にして非可換多様体を 対応させるかが本稿の目的ではない。 むしろ、非可換環が主であって、可換理論はその影である、 という立場に立ち、 「自然にシンプレクティック構造をもつ多様体には 実は対応する自然な非可換多様体があるはずである。」 という作業仮説を立てることにする。
ここにいう「自然にシンプレクティック構造をもつ」空間としては、 射影代数多様体(これはケーラー計量をもつ)や、 一部のモデュライ空間を想定している。