理工系線形代数学 No.6要約

今日のテーマ:行列式

定義 6.1 (符号)   $\{1,2,\dots,n\}$ の順列 $\sigma$ が与えれらているとする。 $1,2\dots, n$ を平面上に一直線上に並ぶように等間隔で並べて描き、 その下にも 同じもののコピーを掻いておく。 $1$$\sigma(1)$,$2$$\sigma(2)$,..., $n $$\sigma(n)$ とを それぞれなめらかな曲線で結ぶ。(ただし三曲線が一点に会さないようにする。) このとき、曲線同士の交点の数の総数を $n $ とおくと、

$\displaystyle (-1)^n
$

$\sigma$ にしかよらない。この数を $\operatorname{sgn}(\sigma)$ と書いて、 $\sigma$ の符号と呼ぶことにする。

定義 6.2   正方行列 $A$ に対して、

$\displaystyle \operatorname{det}(A)
=\sum_\sigma \operatorname{sgn}(\sigma)
a_{...
...ma(2)}
a_{3 \sigma(3)}
\cdot \dots \cdot
a_{{n-1} \sigma(n-1)}
a_{n \sigma(n)}
$

(和は $\{1,2,\dots,n\}$ の順列 $\sigma$ 全てに渡る) のことを $A$ の行列式という。

定義 6.3   $n\times 1$-行列のことを、$n $次元列ベクトルともいう。 行列 $A$ と列ベクトル $\mathbbm b$ に対して、 $A\rfloor_i \mathbbm b$ で「$A$$i$番目の行ベクトルを $\mathbbm b$ に 置き換えて得られる行列」を表すことにする。$($ここだけの記号。$)$

命題 6.4   $\operatorname{det}$ について、以下のことが成り立つ。
  1. $\operatorname{det}$多重線形である。すなわち、任意の正方行列 $A$、 任意の $n $ 次元列ベクトル $\mathbbm u,\mathbbm v$ と 任意の実数 $c_1,c_2$、任意の $i \in \{1,2,\dots, n\}$ にたいして、

    $\displaystyle \operatorname{det}(A \rfloor_i (c_i \mathbbm u + c_2 \mathbbm v))...
...det}(A \rfloor_i \mathbbm u)
+
c_2 \operatorname{det}(A \rfloor_i \mathbbm v)
$

    が成り立つ。
  2. $\operatorname{det}$交代的である。すなわち、$A$ の列ベクトルに 同じものが現れたなら、必ず $\operatorname{det}(A)=0$ である。
  3. $\operatorname{det}$ は符号交代的である。 すなわち、行列 $A$ の2つの列をいれかえた行列を $A'$ と書いたとき、 $\operatorname{det}(A)=-\operatorname{det}(A')$ が成り立つ。
  4. $\operatorname{det}(1_n)=1$.
逆に、多重線形かつ交代的な写像 $f: M_n($$\mbox{${\mathbb{R}}$}$$) \to$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$ が与えられたとき、 $f(A)=f(1_n) \operatorname{det}(A)$ が成り立つ。

注意: 多重線形性(1)の仮定のもとで、交代性(2)と符号交代性$(2')$ とは同値である。