補題8.2 の証明。
次の補題は私の昔の講義では「補題8.2」の番号がついていた。 現在はその名前は変わってしまったが重要であることは変わらない。 第8回の講義ではその証明に当たる部分で基本対象式と対象式の関係を用いたが、 それは本来まだ証明していないので使うのは邪道かもしれない。 ここでは参考書(永田:可換体論 裳華房)にならった証明を つけておくことにする。アイディアは、最小分解体の一意性をうまく用いるところにある。
補題 8.2
の代数拡大体 が与えられたとする。 のすべての 上の共役が 内に存在するならば(すなわち、それらの最小多項式がすべて 上では 一次式の積に分解されるならば)、 は の正規拡大である。
[証明]
上の の最小多項式を それぞれ とおく。 とおくと、 は の最小分解体である。 の元 を一つ取ってきて、その 上の共役 を考える。 の適当な拡大体 を取れば、 体の中への同型 で、 を満たすものが 存在し、(必要なら をさらに十分大きなもので取り替えて、) は 体の中への同型 に拡張できる。 , はともに の部分体で、 の最小分解体であるから、 . 特に は を元として含む。