理工系線形代数学 No.3要約

今日のテーマ:連立方程式の解法と行基本操作

連立一次方程式は行列算で表現できる。例えば、

\begin{equation*}
\left \{
\begin{aligned}
& x + y= 5 \\
&2 x + 4 y =16
\end{aligned}\right .
\end{equation*}

$\displaystyle \begin{bmatrix}
1 & 1 \\
2 & 4
\end{bmatrix}\begin{bmatrix}
x \\
y
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
5 \\
16
\end{bmatrix}$

と表現できる。 さらに、 $ A=\begin{bmatrix}
1 & 1 \\
2 & 4
\end{bmatrix}$, $ \mathbbm x=
\begin{bmatrix}
x \\
y
\end{bmatrix}$, $ \mathbbm b
=
\begin{bmatrix}
5 \\
16
\end{bmatrix}$ とおけば、 これは更に簡潔に $ A \mathbbm x= \mathbbm b$ と表記できる。

更に次のような方程式を考えてみよう。

$\displaystyle \begin{bmatrix}
1 & 1 \\
2 & 4 \\
4 & 5
\end{bmatrix}\begin{bma...
...
y \\
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
5 \\
16 \\
23
\end{bmatrix}\tag{あ}
$

$\displaystyle \begin{bmatrix}
1 & 1 \\
2 & 4 \\
4 & 5
\end{bmatrix}\begin{bma...
...
y \\
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
5 \\
16 \\
20
\end{bmatrix}\tag{い}
$

$\displaystyle \begin{bmatrix}
1 & 1 & 0 \\
0 & 1 & 1 \\
1 & 0 & 1
\end{bmatri...
...
y \\
z
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
2 \\
4 \\
6
\end{bmatrix}\tag{う}
$

$\displaystyle \begin{bmatrix}
1 & 1 &0 \\
0 & 1 & 1 \\
2 & 4 & 2
\end{bmatrix...
...
y \\
z
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
1 \\
2 \\
3
\end{bmatrix}\tag{え}
$

$\displaystyle \begin{bmatrix}
1 & 1 &0 \\
0 & 1 & 1 \\
2 & 4 & 2
\end{bmatrix...
...
y \\
z
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
3 \\
5 \\
16
\end{bmatrix}\tag{お}
$

これらの連立方程式は「加減法」によって解けるのであった。 行列でも同じことを行うことができる。行列の行基本操作 とは、
  1. 2つの�� を入れ替える。
  2. 特定のひとつの�� に、別の�� の定数倍を加える。
  3. 特定の一つの�� を定数倍する。
という操作のことを言う。

行列は行基本操作を何度も行うことにより、簡単な行列に変形することができる。 このことは、方程式を解くときはもちろん、それ以外の目的でも大変重要である。

ダイコン、ジャガイモ、レタスは それぞれは次のような栄養素をもっている。 ( いずれも100 g あたりの量を $\mu$g 単位で書いてある。 文献を参考にしたので 当てずっぽうというわけでもないが、 かなりいい加減な数字にしてある。)

 
ダイコン ジャガイモ レタス
ビタミン A 0 0 300
ビタミン C 10 15 5
カリウム 250 350 200
ナトリウム 20 1 2
葉酸 35 25 75

ダイコンを $a$, ジャガイモを $b$, レタスを $c$ (単位は $100g$) だけ食べたとして、そのとき摂取した栄養はと言えば、上の表から

$\displaystyle \begin{bmatrix}
\text{ビタミン A} \\
\text{ビタミン C} \...
... 1 & 2 \\
35 & 25 & 75
\end{bmatrix}\begin{bmatrix}
a\\
b\\
c
\end{bmatrix}$

という行列算で得られるわけだ。 (単に表を行列の記号に直しただけであることに注意。数学者はずぼらだから 罫線なんかは引かないのだ。)

1日目にはダイコンを $a_1$, ジャガイモを $b_1$, レタスを $c_1$ (単位は $100g$) 2日目にはダイコンを $a_2$, ジャガイモを $b_2$, レタスを $c_3$ (単位は $100g$) だけ食べたとして、そのとき摂取した栄養を表に書くと、

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$\displaystyle \begin{bmatrix}
\begin{matrix}
\text{...
...
\end{bmatrix}\begin{bmatrix}
a_1 & a_2\\
b_1 & b_2\\
c_1 & c_2
\end{bmatrix}$

ここで、 (ビタミンA)$_1$ は1日目に摂取したビタミン量...etc である。

今は適当な栄養素だけを抜きだして計算したが、 栄養素の数を減らしても、増やしても、同様の話ができる。

ほかにもこのような計算はあちこちで見られる。