代数学III要約 No.12

\fbox{$1$\ のべき根}

定理 12.1   正の整数 $ n$ に対して、$ z^n=1$ を満たす複素数 $ z$ はちょうど $ n$個存在する。 それらは

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$\displaystyle \exp(\frac{2 \pi k\sqrt{-1}}{n}) \qquad (k=0,1,2,\dots,n-1)
$

であり、これらを複素平面上で順に線分で結ぶと単位円に内接し、 $ 1$ をひとつの頂点とする正 $ n$ 角形ができる。

命題 12.2   一般に、体 $ K$ と正の整数 $ n$ に対して、

$\displaystyle \{x\in K; x^n=1\}
$

は乗法に関して群をなし、その位数は $ n$ 以下である。

定義 12.3   体 $ K$ に対して、$ n$ 乗して初めて $ 1$ になるような $ K$ の元を ($ K$ における)$ 1$原始 $ n$ 乗根と呼ぶ。

命題 12.4   $ {\mathbb{C}}$ における $ 1$ の原始 $ n$ 乗根 を $ \zeta_n$ と書くと、 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ (\zeta_n)$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ のガロア拡大であり、 ガロア群 $ \operatorname{Gal}($$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ (\zeta_n)/$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ ) $ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の乗法群 $ ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}})^\times$ と同型である。

命題 12.5   $ p$ が素数の時、 $ ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p{\mbox{${\mathbb{Z}}$}})^\times$ は巡回群である。

ガロア群がアーベル群(可換群)であるとき、アーベル拡大と呼ばれる。 上の    $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ (\zeta_n)$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ のアーベル拡大の一例である。 実はつぎの驚くべき定理が成り立つ。

定理 12.6 (クロネッカー・ウエーバー)   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ のアーベル拡大は必ずある円分体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ (\zeta_n)$ の部分体である。

上記定理は類体論の成果の一つである。 類体論のおかげで、 アーベル拡大(とくに $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ の有限次代数拡大 $ K$ のアーベル拡大)については、 上記定理の他にもいろいろなことがわかっている。 それでは、非アーベル拡大についてはどうかという疑問が当然生じるが、 それについては 現代でも活発に研究が行われているところである。