第10回目の主題 :
前回までに、
可換PID
上の有限生成加群は
上の巡回加群の直和で
あることを示した。今回は
の元の「素元分解」を用いて
その構造をもう少し細かく吟味しよう。
は
環の直積分解においては、二つの基本的な元が重要な役割を果たす。
![]() |
(*) |
上の補題により、環を直積分解したいときには、
*
を満たす
元
を探せばいいことがわかる。
のことを
(直積分解に対応する)中心的射影と呼ぶ。
実際には、次の補題のように、中心的射影を一つ見つければその相棒は
自動的に見つかる。
可換 PID
の元
が二つの「互いに素な」元の積であるとき、
剰余環
の直積分解が次のように書ける。
が存在する。
ともみなせる。
が存在する。
上の系と有限生成アーベル群の基本定理により次の系が成り立つことがわかる。
同様にして、次の命題が成り立つことがわかる。 (一般に、可換 PID の元に対しては素因数分解が一意的に存在する ということに注意しておく。)
一般に、環
に中心的射影
が存在すると、
上の加群も次のような分解を受ける。